FATAL ASK  21.邂逅

「何を考えてるんだ、シン!」

 その大きな声を聞きつけて、ステラはぼんやりと目を覚ました。

「捕虜にしろとは確かに言ったが、だからって何の検疫もせずにいきなり連れてくるなんて、この艦のクルーを危険に晒すようなものだぞ!」

 声の主はとても怒っているようだったが、とても優しい声をしていた。ステラだって作戦が失敗して叱られると落ち込むことはあったけれど、この声の主が相手だったら、そんなに怖くないかもしれないと思った。

 明るい天井。清浄なアルコールの匂い。医務室だろうか。

「ネ、オ……?」

 ぽつりと呼んで、捜す。その名を持つ者を。記憶に焼き付いたその姿を。

 赤い服を着た誰かが、そんなステラの様子に気付いた。

 目が合った。

 ネオだ、と、ステラは一瞬確信めいて思い、笑みを浮かべた。それほど、その相手はネオによく似ていた。

「シン、アスラン・ザラ」 だがその相手は、聞き覚えの無い声で他の者へ呼びかける。「捕虜が目を覚ましたようです」

 ──捕虜。よくわからない言葉だ。

 目を覚ますより以前のことを思い出さない、というのが常であった彼女だが、このときばかりは自分の記憶を遡らざるを得なかった。

 そう、ステラは闇の中を疾走していた。

 ネオが撃たれたと聞いて。

 彼を守らんとして。

 彼女の征く手を阻む者は誰も居なかった。

 もう、味方はどこにも居なかった。

 だがそんなこと、彼女はどうでもよかったのだ。

 ネオはステラが守る。ステラが、絶対に──。

 ネオが乗っていたウィンダムが見えた。

 そこに近付いていく敵機が見えた。

「やらせない!」

 いっそうの激情を発露させ、ステラはMSのビームブレイドを展開し、獣のように襲い掛かる。

 しかし彼女は、そこしか見ていなかった。

 ステラの接近にいち早く気付いていた敵の同行機が素早くドラグーンを展開し、一直線に突進する彼女の機体に一斉砲火を浴びせていた。身体ごと激しく揺さぶる爆発の衝撃。シートに全身を打ち付けた彼女は、あまりにあっけなく意識を失うことになったのだ。

 捕まった。ステラの脳はやっとそれを理解した。自分は敵に捕らわれてしまったんだ──。

「ステラッ」 別の赤い服を着た少年が駆け寄ってきて、自分の名を呼ぶ。「ステラ、大丈夫か? どこも痛く──」

「ウワアァァッ!」

 ステラはがむしゃらな叫び声をあげると、殺気をみなぎらせ相手に飛びかかった。身構えようとした彼の肩口を引っ掴み、勢いに任せて壁に打ち付け、床に叩き伏せる。ふところのナイフも、袖口の刃も何もかも取り上げられてしまっていたようだが、彼女の武器はそれだけではない。

「敵だッ!」 ステラははっきりと言った。「敵は殲滅するっ! みんな、みんなわたしが守る!」

 大きく開いた口で敵の喉笛を食いちぎろうとしたステラに、横からものすごい衝撃が襲い来た。

 それは、そこにいた第三の男が容赦なく放った蹴りの一撃だ。ステラはそんな息も詰まる攻撃を脇腹に受け、身体の内側で何かが折れる音を聞いた。吹っ飛ばされて白い壁に思いきり叩き付けられた時、本当に息が止まる。

「がはッ……ぐ、うう…」

「やめろアスランッ!」 誰かが──さっき、まさにステラに食い殺されようとしていた少年が間に入って、制止を試みる。「相手は女の子なんだぞ! 大事な捕虜でもあるのに、死んだりしたらどうするんだよっ!」

「ヒッ…!」

 びくん、とステラの全身が震えた。

 死ぬ? いま、あいつはステラが死ぬと言ったのか。

「ステラッ?」

 起き上がりかけたところで息をのみ、硬直した彼女の様子がおかしいと感じたのだろう。少年が肩越しに振り向いて呼びかけてくるが、ステラはもう、それが自分の名前であることすら認識できなくなりつつあった。

 ステラは死ぬのか? 終わるのか。

 死ぬのか。ネオと永遠に離れ離れになってしまうのか。そんなの嫌だ、怖い。

 独りになってしまう。暗い場所でひとりきり、死ぬ。嫌だ、怖い。怖い怖い怖いコワイコワイこわい──。

「イヤアアァァァァァァ──ッ!」

 漠然とした恐怖のタガが外れ、ステラは絶叫した。

 しっかりしろ、と誰かが叫んだけれど、もうそんなもの聞こえていない。

「いやだ、いやだ!」 ステラはわめいた。「死ぬの、イヤ…! こわいっ…助けて…!」

 どんなに引き戻されそうになっても、必死に死の手を振りほどき、逃げる。どこでもいい、本当にどこだってかまわなかった。

 とにかく安全な場所へ。ネオのいるところへ。

 とにかく安らげる場所へ。ネオのいるところへ。

 とにかく敵の居ない静かな場所。ネオの──。

「死にたくないっ! 死にたくないいぃっ!」

「大丈夫だよ、ステラッ!」

 騒然としたそこが、静まる。

 大丈夫だよ、ステラ──。ネオとまったく同じ言葉をかけてくれたのは、死の手を伸ばしていたはずの少年だった。恐ろしい異形であったはずの彼の腕はいま、確かにひとのかたちをして、恐怖に動転しガクガク震えているステラの身体を、苦しいほど強く抱きしめてくれている。

 ぬくもり。鼓動。吐息……相手の何もかもが伝わる。

 生きている感触。死んでなんかいない。自分は死んでない、大丈夫、ステラ──。

「大丈夫だよ」 相手はもう一度、繰り返して言った。「おれが居るから、おれが守るから」

「まも、る……?」

 そうなのか──ステラはそれまでの狂乱ぶりを、自分自身でも忘れてしまっていた。

 ずっと怖くて、怖くて仕方が無くて、どうしようもなくて、逃げることさえできなかった暗闇から、この者が守ってくれるのだ。

「ネオ…」

「ネオじゃない」 相手は訂正した。「おれはシンだよ。シン・アスカ」

「シン…?」

「そうだよ、ステラ」

 ステラは相手の…シンの顔をまじまじと見つめた。

 赤い目。優しい。白い肌。きれい。黒い髪。柔らかい。見たこともない会ったこともない、知らないひと。

 でも、何故だかその微笑みが懐かしかった。慣れ親しんだネオのものではないそれが、もうずっと長いこと忘れていた家族を取り戻したような安心感に満たされ、胸の痛みがうそのように引いていく。

「うん……シン」

 ふっとステラの表情に笑みが戻る。それを見て、安心したようにシンも笑った。安心したのはステラのほうなのに、それがステラは何だか可笑しかった。



 ステラは肋骨を二本も折る重傷だった。医療班が彼女の検疫も兼ねて治療を行なうことになり、それならばとそこにいたアスラン、レイ、シンの三人もブリッジへ戻ろうとしたのだが、ステラがシンと離れることをどうしても拒絶し、あえなくシンだけがそこに残ることになった。

 検査着への着替えもあるし、何より女性の身体を調べるのだからと、彼女の対応をする医務クルーも女性で占められたというのに、今ごろ彼は目のやり場どころか居場所にさえ困っているかもしれない。

「やれやれ…」 アスランは長い溜息を吐いた。「とんだ騒ぎだったな」

「…シンには、先の大戦で亡くした妹が居まして」 シンの行動をフォローするように、レイが言った。

「知ってるよ。だがまさか、捕虜相手にまであんなに情をかけるとは思わなかったんだ」

「アカデミーに在籍していた頃、同期だったルナマリアの軍役志望を『信じられない』と言ったこともありました。もともと、女性の戦場進出に対しても思う処があったようです」

「まあ……解らないでもない」

 それにしても──。アスランはつい、一歩下がって歩くレイにちらりと視線をやる。

 こいつの徹底した静観主義には恐れ入った。あろうことか、シンがステラに食い殺されそうになってもなお、銃を抜く気配すら見せなかったのだ。レジェンドの攻撃で損傷し機能停止したガイアから引っ張り出したステラを抱いたシンが、血相を変えて医務室に駆け込んだ時にも、彼はただ傍に付き添っていただけだった。

 クルーがどうして止めなかったのかと訊ねたら、彼は淡々と、こう答えた。

『それがシンの意志でしたので』

 投げっぱなしだと思う者もいるかもしれない。

 しかし、そうではない。

 レイは『すべての責任を取る』ことができる立場に在るシンに、文字通り全責任を委ねたのだ。言われなくてもシンは、この責任は自分が負うと言っただろうし、かと言って念を押すのも今更である。シンという人格をこれでもかと知り尽くした少年、それがこのレイなのだ。

「レイ。とりあえずキミはブリッジへ戻ってくれ」

「了解。──あなたはどうされるのですか」

「俺にはまだ、相手をしなきゃならない奴が居る」

 レイは別段そこに食い込んでくることもなく、敬礼を残してブリッジへの通路へと入っていった。その背を見送り、アスランはレイとは違った通路へ入ると、その奥に控える扉へと取りついた。

「声紋認証」 扉に向かってアスランは言った。「フェイス所属、アスラン・ザラ」

 ピピッ。素早い認証は一瞬で終わり、ロックが外れる。それと同時に彼は、扉のあるその位置に、その形をした『イージス』を展開した。そして、まるで隠した銃でも握るように右手にエネルギーを充填する。頭の中でバルブ解放をイメージし、可能な限り前方広範囲へと撃ち出せるように。

 あっけないほど簡単に開いた扉の向こうからは、何も来なかった。準備はしておくに越したことはないけれど、これだけ静かだとかえって不気味だ。

「──君は抵抗しないんだな」 アスランは『イージス』の壁を通って室内へ入り、言った。「スティング・オークレー…といったか」

 ミネルバが最新鋭の設備を持つといっても、戦うことに特化した戦艦である。よって捕虜を収容するための専用の区画などは持たず、そういうものはクサナギのほうがまだ充実していると言える。

 たった一機でガーティ・ルー防衛のため奮闘したセカンドステージ・MSカオスのパイロットであった少年は今、本来ならばクルー用である居心地のよい待機エリアの一室を貸し切っている。決して名乗ろうとはしなかったが、アスランとシンは彼を一目見て、『スティング・オークレー』であると認識していた。

 奥に設置された仮眠用のベッドに座って、スティングは部屋へ入ってきたアスランを一瞥する。思いのほか、口を開いたのは彼が先だった。

「……真空だぜ? ここ」

「だから俺が来たんだろ」 アスランは言わせるなとばかりに言った。

「むちゃくちゃだろ…」 がっくり項垂れて彼は消沈した様子を見せる。

「アウルが水を操っていたからな。君も何か特殊な『なにか』を操るんじゃないかとは思っていたが、まさか『大気』や『空気』とはな」

 アウル、と聞いた刹那、アスランを窺うように見上げるスティングの鋭い目が、何かしらの感情に揺れる。アスランはそれを見逃さず言った。

「俺たちと君たちは、確かに敵同士だ。警戒する気持ちは解るが、これで誰かここのクルーを殺しでもしたら、俺は独断で君を殺さなければならなくなる。できることなら、そんなことはしたくない」

「……ガーティ・ルーは?」

「……自爆した」 黙っていても仕方がない。アスランは正直に言った。「ミネルバの砲撃でスラスターを損傷し、航行不能になったところで突然、な」

 アスランがテコでもブリッジから動かなかったのは、こういう事態に備えるためであった。

 決して大規模なものではなかったにしろ、ガーティ・ルーはそこそこのサイズがある母艦だ。至近距離で自爆をくらえばミネルバとてタダではすまない。ブリッジに残っていたアスランが艦前方に展開した『イージス』によって、その爆風はほとんどミネルバに、そしてクサナギにも届くことはなく、ガーティ・ルー は宇宙の藻屑と消えてしまった。

 そしてここにきてようやく、アスランは自分がこの作戦に参加した本当の意義を果たせた気がしていた。

「自爆の直前、艦からシャトルが脱出するのを見たという情報もある」 アスランは言った。「君は出撃前、クルーの中で普段見かけなかった者や、挙動のおかしい者を見なかったか」

「そんなこと俺に聞いてどうなるんだよ?」 スティングはもっともなことを訊ねた。「そもそも、そんなことを俺が簡単に喋るわけが──」

「君たちファントムペインは、連合から見放されたんだ」

 えっ、と息をのむように、少年の表情が固まった。

「ガーティ・ルーが自爆を行なったのも、『連合の物である』という証拠を残さないためだ。本当ならザフトのダミーコードを持つMSで撃墜するつもりだったようだが、ミネルバの妨害で実行不可能となり、最終手段に踏み切ったものと思われる」

 アスランは淡々と、なるべく感情を込めないように言った。彼も、シンのことを注意してばかりではいられない。自分で自分の感情を殺しておかねば、悔しさと苛立ちでどうにかなってしまいそうだった。

 アウルという存在をスキャンした時に、イヤというほど思い知ったはずだ。こういうことを平然とできるのが連合という組織なのだと。艦に残っていた整備員や操縦士、戦う力も脱出経路も持たない彼らがどうなったのか、もはや考えるまでもない。

 クサナギが見たと伝えてきた脱出シャトルは、『首謀者』だけが乗っていたに違いない。他の者など、誰も──。

「じゃあ…」 スティングは唖然と言った。唖然と言って、それからうつむき、悔しげに歯噛みするように言った。「それじゃあ、俺たちはもう…最初から……」

「君たちはザフトの捕虜という扱いになったわけだが、決して悪いようにはしない」 アスランは言った。「君たちが実行したラクスへの襲撃、彼女の死亡という『デマ』の拡散、マイウス宙域での工作……覚えている限りでいい。それが連合からの指示であったことを証言してほしいんだ」

 突然のことでついて来られないかもしれない。だが、ちゃんと考えることができれば悪くない話のはずだった。連合では『存在しない』ことになっている彼らの経歴など、とうに抹消されて久しい。ならばそれを逆手にとって、オーブやプラントでの『市民権』や軍属の階位を与えることで、肩書きなんていくらでも作ってやることができるのだから。

 もし『連合への潜入工作員』といった、やや不名誉なものになったとしても、それでもこれを拒否して、連合からの脱走兵として行き場を失うよりは余程いいのは明白だ。少なくともアスランはそう思っている。

「……アウルは」 スティングは言った。「いま、どうしてる」

「クサナギに乗っているよ。俺の友人を護衛してくれている」

「ステラはどうした?」

「……それが、よくわからないんだが…」 アスランは自身の理解が及ばない現状に戸惑いながら、それでもありのままの事実を言うことにした。「うちのクルーに懐いた」

「はっ?」 さすがにわけがわからなかったらしく、スティングは驚いて顔を上げる。

「彼女はなんだ?」 アスランもこれには困り顔だ。「『死ぬ』ことを極端に怖がったかと思えば、慰めた相手に急に心を開いたりして」

「慰めた? そんなバカな、なんて言ったんだよ」

「まあその、場の勢いというか突発的なものなんだが。怯えている様子だったから、こう、抱きしめて、言ったんだ。『守ってやる』と」

 スティングはそれを聞いて、一瞬、何も言わなかった。

 あの子はこういう子だからとか、ちょっと変わってるから……といった弁明のようなものは一切せず、しばらく黙っていたかと思えば納得したようにぽつりと呟く。

「そうか……会えたんだな、『王子様』に」

 ますますもって何のことだかわからない。キラのチカラを継承した自分たちの一派とは違った『進化』をしたこの三人の間には、彼らにしかわからない疎通があったのかもしれない。

「──あんたらにこんなことを言うのは今更だと思うが」 スティングは言った。顔を上げた彼の表情には、どこか、ナニカを振り切った決意のようなものが浮かんでいる。「アウルとステラの安全だけは、絶対に保証しろ。俺が情報を提供する条件はそれだけだ」

「もちろんだ」 別の条件をつけたり断る理由なんかどこにもない。そもそも、もとよりそのつもりである。「俺はまだ会っていないが、君たちの司令官も、現在は別室で聴取を受けているはずだ。俺の監視下という条件で問題なければ、あとで面会も許可しよう」

「は、VIP待遇だな」

「君たちはオーブとプラントの切り札になるんだ。無下に扱うようなことはしないさ。……『俺たち』にとっては、同胞でもあるんだからな」

「……感謝するよ」

 ──その言葉が妙に重かった気がして、アスランはふと、相手をよく観察した。先ほど見えた決意にも近い何かが宿った、はっきりとした明言。アスランの下した『待遇』という処置に感謝しているのは確かだろう。

 しかし、いくら連合から見放されたことが動かしようのない事実だったとしても、こうも簡単に受け入れられるものではないはずだ。連合所属者としてデュランダルの尋問に応じてみせたアウルとはまったく違う。ショックこそ受けれど、悩む素振りもなく、オーブやザフトを拒絶するわけでもなく、今の状況を受け入れるしかないことを早々に理解したこの態度が示すのは。

「大事なんだな」 アスランは言った。「あのふたりのことが」

「ここにきて、それを理解してくれるヤツに会えるなんてな」 スティングは自嘲めいて笑った。「…ここに居てくれたのがあんたで良かったと思うぜ」

 本心のようだった。明確な感情と人格を持ち、自身で周囲の状況を理解し、在り方を考えることができる──先の大戦でまみえた、人格までも捻じ曲げられた者たちとは根本から違う。

 だがこれは、個人の人格を尊重しようなどという連合側の『成長』でも何でもない。先の大戦で、先の者たちは局地投入しかできなかったから、今度はもっと自律した思考を持たせ、白兵戦や難度の高い作戦を実行するための能力を求めた結果なのだ。それだけは、忘れてはならない。

「またあとで来る」 アスランは言った。「食事は他の者に届けさせるから、好みがあるなら言うといい」

「──あんた、ひとつだけ嘘ついてるだろ」

「えっ?」

 アスランは驚いて、立ち去りかけたところを振り向いた。

 ここまでの態度や言葉に嘘があったなどと、自分でも絶対にないと言い切る自信がある。何のことだか解らない顔できょとんとしている相手に、スティングはイタズラが成功した子供の笑い顔で言った。

「アウルがクサナギで護衛してるっていうあんたの『友人』、ダチだなんて嘘だね」

「な」

「恋人だろ」

 予期しない言葉を投げつけられて、何を言ってるんだ、とんでもない──と怒るはずだったアスランは今度こそ絶句した。

「友人って言った時に」 スティングは解説でもするように言った。「あんた、ちょっとだけ間を置いたろ。息遣いが変わったっていうか。呼吸の調子で、だいたいわかるんだよ。そいつの言ってることが本心かどうかがな」

 なるほどこの能力があれば、相手の言葉や、伝え聞いた今の事態を吟味する必要はない。本当のことならば受け入れればいいだけで、嘘ならば信じなければいいだけのことである。

 ここに至るまで、スティングが異様に聞き分けがよかった理由はこれではっきりしたけれど、アスランはこのとき、新たな頭痛のタネが出現したことに眩暈すら禁じ得なかった。

 また厄介なのが増えたぞ、これは──。







                                         NEXT.....(2017/07/29)